2015年2月号 第348号
―春水は四澤に満つ―
これは昔の仏教者が説いた言葉です。
冬の間、山里に住む人々を閉じ込めていた積雪が春の訪れと共に解け出して野山を潤し、四方の沢に恵みをもたらしてくれるようになる。人間もまた然り、積雪のように厄介者扱いされていた人でも、仏縁に触れることによって、他の人に恵みを与える慈愛に満ちた人へと昇華していくことができるのだ、という教えです。
そうかもしれませんね。始めから出来上がったような人なら、なにもご信心なんてする必要はないのかもしれませんものね。
それはそうと、最近、北国出身の私の知人がこんなことを言っていました。
「“北国ってロマンチックだな。冬は雪景色が楽しめるしさ”なんて言う人がいますけど、温暖の地の人にこんなことを言われると腹が立ちます。雪国に住む者の苦労がわからないんですよね」
私は「そうだよね」なんて適当な相槌を打ちながら、耳の痛い言葉だなと北国に住む人々の苦労を思い遣れない自分を反省したことでした。
それはそれとして、お互い信行に励むことによって四澤に満つ春水の如き香風寺信徒にならせていただこうではありませんか