2017年6月号 第376号
あなたも成佛せる人に
水の温度が上昇して水蒸気になる上昇点を沸点といいます。 沸点の沸という字の〝さんずい”を〝にんべん”に置きかえると「佛」という字になります。
「沸」「佛」の旁の「弗」という字は、ある物が変化して、異なった姿に転じるという意味があります。ですから「沸」は水が蒸気に転じてしまうという意味。
「佛」は人が人を超越した境地に到達するという意味。ですから「成佛した人」というのは「悟りの境地に到着した人」という意味です。では「悟りの境地に到達した人」「成佛した人」というのはどういうふうに心を転じた人のことをいうのでしょうか。
それは、他の人との比較の上で自分を評価したり位置づけしたりせず、人をうらやまず、人を見下さず、自分のいのちを精一杯生きようとする人、自分の器を堂々と生き抜こうとする人のことをいうのです。
死んでから成佛することを望む前に、生きているうちに心の沸点に到り、悟れる人、成佛せる人になるよう心がけたいものです。
では、この世において成佛せる人になるため、具体的にどのようなことに心がけるべきでしょうか。まずは「有難うございます」を口ぐせにしてしまうことです。
人間はたとえどんなに元気でも、お金があっても、人さまのお世話にならずには生きていくことはできません。
人間は社会という器の中で、眼に見えない人たちの働きの「お陰さま」で生きています。
「わたしはだれの世話にもならん」などとにくたらしいことを言わず、「お陰さま」「有難う」と感謝の言葉を口にしつつ、暮したいものです。
「有難うございます」の言葉を口ぐせにして暮らしていると、佛立宗のご信心に出会えたこと、お寺にお参りさせて頂けることが、本当に有難いことだと、しみじみ、つくづく感じられるようになるものです。実はこの心境に到達した人が「まことの成佛せる人」なのです。
ご参詣、ご奉公に身を尽くし、心を労する中に喜びを見い出すことのできる佛立信者、すなわち成佛せる香風寺信徒になるよう互いに励まし合い、ねぎらい合いつつ、まことの仏道を歩ませていただきましょう。
うれしさは 人と生まれし
かいありて
きょうもみのりの
ためにくらしつ
さとらずも さとれる人に
なりにけり
信心ばかり 貴きはなし
(御教歌)